とある神官の話



「ノーリッシュブルグに同行して下さいませんか。それからランジットには申し訳ありませんが、ランジットには聖都に残って下さい」

「俺は別にいいが……」

「それから今ならミスラもいますから、ゼノンの不在のカバーも」

「ミスラって、あの?まじかよ」




 あれ、と思った。
 ミスラ、と聞いてピンとくるのは"あの噂の"人しかいないのではないか。ミスラ・フォンエルズ。人違い?

 ランジットが顔を覆う中、「旅準備が必要でしょうし、出発は二日後としましょう」と言う。あれ、私拒否権ないんじゃ……?
 私が口を挟む前に、一枚の紙を渡される。質問をする前に「ではまた」とハイネンは足早に去っていく。私はその背中を黙って見ていて、はっとする。横でランジットが残念そうな顔をしていた。




「あいつはその、ああいうやつだ」



 どんなやつだ!と私はいいそうになったのを抑え、自宅へと戻ることとした。ランジットには「気をつけろよ」と言われたが、はっきりいえば、どうしたらいいのかわからなかった。




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