とある神官の話
家へと私は戻り、荷物を纏めた後。ブエナの孤児院へ戻った。風邪ひきゼノンの様子見と、ブエナにまた聖都を離れることを話すために。
咳込むゼノンに、私は薬を進める。若干苦い顔をしたがやがて押し込むように飲み干した。もしかして苦手なのだろうか?
「どうなっちゃうんでしょうね」
ふと思った。
神官となってから、なんだかいっそう物騒になった気がする。ミノアという、何だか不安だらけだ。
神官の私でさえ不安なのだから、一般人ならばなおさらだ。孤児院の子供達もまた「こわい」と話しているのだから。元神官のブエナや、今風邪ひいているとはいえ"魔術師"の力を持つゼノンがいるから、孤児院は大丈夫だろう。だが、不安は拭えない。
今から二十年程前の事件が絡んでいるとか。あんな事件が絡んでるなら私に何ができるのか。
弱音を吐く。しかもストーカー予備軍などと呼んでいた男に。
「不安ですか」
「だって、あの二十年前の事件が絡んでるとか」
「アガレス・リッヒィンデルは、あんな事件を起こすような人物だったとは思えないと聞きます」
今から二十年程前。
ひとりの神官が起こした殺人。