とある神官の話





 二十一歳にもなって彼氏なし、恋愛経験皆無に等しい私。それに比べゼノンは違う。本人は知ってるのか知らないが、女子の間では密かにファンクラブ的なものがあるらしい。
 私としてはそのゼノン大好きな人達から睨まれ、冷たい視線を浴びるのは真っ平ごめんなのだ。男子にはわかるまい、わかるまいさ!あのブリザード並の冷たい視線を。


 一人悶々としていると、腰あたりに衝撃。振り返ると人懐こい笑み「シエナお姉ちゃん!」


 孤児院にいくと、よく絡んでくるカイムだった。長袖を捲って、その腕には手当のあと。どうやらまたやんちゃをし、傷を作ったとみえる。
 私の腰から離れ、ちょうど神官と話し終えこちらに来たゼノン見る。









「シエナお姉ちゃんのカレシ?」

「ばれましたか」

「違います!嘘を教えないで下さい」








 私は頭を抱えたくなった。


 くく、と笑うゼノンに首を傾げたカイムが「ふうん」と私とゼノンの間に入る。ちらりとブエナに助けを求めたが、彼女は「いいねえ若いって」と言ったきり、他の子供達のもとへ行ってしまった。

 カイムの小さな手が私の手を掴む。あたたかい。






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