とある神官の話





「この頃アガレスが動いてるんだよ」

「っ!アガレス様が」

「まあ落ち着きなよ。ニオ、じゃなくてリリエフ」

「お前が私の名を呼ぶな」

「おお怖い怖い」



 飛んできた氷が壁に刺さる。ヤヒアはそれを首を少し傾けてかわした。ニオ、を乗っ取っているリリエフが殺気立つ。

 しかし「それで?」




「今アガレス様は?」

「さあ。ああでも、好き勝手にやっていいんじゃないの」



 眉をひそめ考えるそぶりを見せるリリエフに、ヤヒアは密かに笑う。想いは激情となる、か。

 さてどう動くか。

 ヤヒアの笑みは、残酷さを隠したものだった。






  * * *




 ―――――聖都。





 何を考えているのか。

 いや、愚問だったか。あの人の考えなどわかったことがあったか。否。いつも突拍子もないことをやるのがあの人だった。そう―――私を拾ったときもだ。

 面倒になるだろうに。
 やさぐれていた私は幼いながらもそう思ったし、また捨てられるかも知れないと怯えたこともあった。だから、必死だった。次捨てられても一人で生きていけるようにと。だが、あの人は何と言ったか。



「捨てる気でいるならなら元から拾うか馬鹿息子」




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