とある神官の話





 体勢を立て直す。

 ダナ・フィルタは確かに能力持ちだ。だが、それは強くない治癒能力だったはず。やはり闇に堕ちたか。男はこれからどうするか考える。

 ローブの裾に赤黒い血が何かついている。やはり、と男は剣を握りしめた。襲い掛かる刃を避けるのも限界が――。








「少し我慢して下さい」







 男が顔を上げると、法衣。しかしそれはただの巡回神官が着ているものとは違う。

 高位神官。

 しかも、その神官は有名人である。銀の髪が風に揺れているのを男は見た。
 ゼノン・エルドレイス。はぐれた味方が合流し、男を支えた。向こうにはローブ姿。声からに女だが、とゼノンは見据える。






「貴方は何者です」

「邪魔する…な!」






 ローブ姿の女が叫ぶ。それと同時に風の刃。しかしゼノンは避けず、片手を振った。刃が飛散。そして床を蹴る!

 腰にさした剣を抜くか、と思いきやゼノンは器用に足払いをかけ、女を押し倒す。絶叫。女が歯を剥き出しに暴れる中、他の神官も押さえ付けようと必死だ。


 顔を見た。あれは――。







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