とある神官の話


「ミゼレットは、何度かハリベヌス一世の求婚を断っているんですよ。それほど高い身分でない己は、王にはふさわしくないと」



 ゼノンは歩きながらそう説明していく。その話は、まるでタイムスリップするように思えた。
 


「それでもハリベヌス一世は諦めず、ミゼレットの邸へ王自ら足を運びました。それも、何度もです。それほど恋い焦がれていた相手だったのでしょう」




 そういえば演劇になっていますね、とゼノンは加える。
 凄い話だ。一人の女性を、国王が心から愛する話は、女性に人気であろう。そういった私にゼノンは頷く。
 正装をしたゼノンと、歴史がある宮殿は何だか似合いすぎた。見た目も貴族といってもおかしくない気がする。

 本当、顔もいいし出世街道まっしぐらなのよね―――――ファンクラブが出来て当然かも知れない。




「……私も見習わなければなりませんね」

「何を、ですか?」





 ―――――駄目だ。

 この雰囲気が駄目だ。駄目。ゼノンは柔らかい表情をしている。ああ彼は、どうして"私"なんだろう。私何かに言ったって、何もないのに。




「少し早いですが――――」




 彼は私の手を取り、"それ"を握らせる。それは小さな、やや縦長の箱「私からのプレゼント、です」

 祭日を明日に控えた今日。祭日といえば、世間一般的に浸透する、贈り物をし合うこと。どうしようと慌てる私に、彼はやや強引にそれを持たせた。
 はっきりできない私が答えないことを彼は知っている。彼もまた、それを逆手にとり、言い続ける。――――ずるいではないか。




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