とある神官の話




「怖いですよ。高位神官となってから、危険なことも増えて何度も死にかけますし。まわりはこの歳でエリート云々言いますが、私はそんなかっこいい神官ではありません」



 むしろへっぽこです。
 彼は続ける。




「自分で言うのもあれですが、神官になった時から、確かに才能はあったのでしょう。けれど、私は弱かったんです。緊張とストレスとで吐くわ倒れるわしましたし」

「"あの"ゼノンさんが」




 私が知っている、そしてまわりが話す"ゼノン・エルドレイス"は、秀才で。エリートで。何でもできて。
 ゼノンは何かを懐かしむような目をしていた。

 彼は、死ぬほど努力をしたのだ。だからこその地位。
 私は――――まだまだ未熟だ。そんな彼らと比べたら、まだまだ。守りたいものを守るには力が必要なのに。
 守られて、ばかりだ「今だってそうですよ」



「えっ?」



 こちらを見たゼノンが笑う。




「リリエフが姿を見せてあまり良い状態ではありません。何かあったとき動けるように、あれこれと手を回してるんですが」

「あ、の」

「ちょっと緊張してるんですよ」



 常に胃薬を手放せないブランシェ枢機卿みたいに。
 そうおどけたゼノンに、私は笑ってしまった。想像出来ない。ブランシェ枢機卿だって若くして枢機卿の地位にいるのだ。エリートといっても良い。
 会ったときにはそうは見えなかったのだが。"それ"が、本当の姿なのかもしれない「私が」



「言うのもあれですが、ゼノンさんなら大丈夫ですよ」





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