とある神官の話


「貴方は彼が嫌いですか」

「いいえ」




 嫌いではない。なら好きかと聞かれれば言葉に詰まる。彼には何度か好きだと言われたことがある。けど、私は?私はどうなの。
 思えば、恋愛らしい恋愛の経験がなさすぎる。それって枯れてるといえるのではないか。私は内心で激しく落ち込む。
 同年代の女の子たちは、輝いてみえた。私とは違う。かわいらしくて、美人で。

 ハイネンは好きかと聞いてこなかった。お菓子をつまむように口へと運ぶ。




「答えをすぐ求め、相手の道を阻むような人物はよろしくない。色んな思いがあり、大切だからこそ、尊重する。例え望む関係にはなれずとも、支えになれたら良いと――――ああすみません。昔話です」





 一瞬、だが。

 ハイネンが心ここにあらず状態に見えた。それはまるで、何かを懐かしむというよりは、悲しい出来事を思い出すように。
 



「貴方は、想われる価値のある人物ですよ。相手がゼノンに限らず、誰かが貴方を思って贈り物をするのは、貴方を知っていて、貴方を思っている証拠ともいえます。ああ、贈り物云々に限らず、貴方のことが好きだという人を私はたくさん知っていますよ」





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