とある神官の話



 ―――――何だろ。


 価値がないだなんて、思っていた。私のかわりなんて沢山いる。結局は一人なんだと。
 ハイネンは「その代表がゼノンという感じでしょうね」と笑った。
 私がその行為と好意にどこか後ろめたさがあるのを、知っているのではないか。だからこんなかとを言ったのか。

 むずむずするような、あたたかさ。それはどういったらいいのかわからない。




「ハイネンさん」

「はい」

「ありがとうございます」




 ハイネンもまた照れ臭そうに笑い「いえいえ」という。そう言って、逃げるように部屋を出ていってしまった。

 ――――ああ、本当に。
 中々、変えられない。ずっと昔からそうやって、きたのだ。他人から贈り物を貰うだなんて滅多になかったし、貰えば、お返しを悩む。貰ったものは返さないと。そんな風に。
 だから、ゼノンが勝手にと言っても気持ちは複雑だった。彼が何が好きなのかもわからない。なら、羞恥心を捨ててでも本人に聞くべきか。

 溜息。今はそれ所じゃない。


 明日に控えた祭日は、三日間。それは警備の関係を考えれば長い。リリエフが動くかもしれない―――様々な問題があった。



「大丈夫だろうか……」




 私は"雪の思い出"を見つめながら、明日に備える。





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