とある神官の話



 レスティが思い出したように目を伏せた。




「嫌な予感がする」

「なんだよそれ」




 それはレスティに似合わない言葉だった。「何といえばいいかわからないけど」と言う。
 確かに――――そうかも知れない。ざわついたような空気。ヨハンは曇った空を眺める。また雪が降り出しそうな天気。この時期ならばおかしくもなんともない。ただ気になるのはリリエフの存在だ。

 祭事を行うことになっているのがハイネンなのだ。そうなると彼はあまり大きく動けない。



「こっちはこっちで出来る限りをするしなねぇよ」

「わかってる。けど」



 不安なんだ。
 そう続けず、レスティは再び空を見上げる。
 指名手配された者たち。一体何が目的なのかわからない。


 無事に終わればいいが。


 ムブラスキ神官、と呼ぶ声に二人そろって振り返る。
 まだ、始まったばかりだ。





  * * *




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