とある神官の話
白い衣服は正装な故、何だか動きにくい。私でさえ動きにくいと思うのだから、もっと複雑そうな正装を纏うハイネンなんて、さらに動きにくいだろう。しかも普段から神官服ではないから尚更。
複雑なのは、そう。ハイネンの側にいるゼノンだ。
目立つ。あの美貌は目をひく。そしてハイネンもハイネンで、びしっときめているのもあってから、ゼノン同様かなりのイケメン化していた。祈りに来ていた若い娘たちが頬を染めるのも無理はない。
ラッセルが「口を開かせなかったらなあ」と言うことに全員が頷いた。
―――――何かあったとしても、出来ることをやればいいんですよ。
ゼノンは私にそう言った。
そう言われて、どこか和らいだ自分がいた。何だか、癪に障るような感じもあったのは気の性だろう。
私は服によって見えないが"雪の思い出"を身につけていた。ゼノンから貰ったネックレスである。
彼とそう話したとき、理解できないくらい熱を帯びた。「よかった。つけてもらえて」だなんて言われて、私はいたたまれなくなった。べつに貴方のためとかいうわけじゃありませんからね!とかなんとか言った自分は、今思うとあれだ、ツンデレキャラだ。私は……断じて違う。
知らなければ苦しむこともない。痛みを、傷つくこともない。それは私の"逃げ"である。ずるい。