とある神官の話
朝の祈りが終わったあとも、祭壇のある場所には人の出入りがある。見回りながらの警備の最中であった。
部屋で休むハイネンとゼノンにかわり、私らはあちこち動ける。アゼルやラッセルと協力しながらのことだ。
現地神官らも、ミスラ・フォンエルズ枢機卿からの命もあり、ハイネンの考えで動いている―――――って。何故あの人は神官なんだろう。あれだけの力があるのに、ふらふらほっつき歩いているのか「シエナ」
「先輩?」
「ちょっと問題発生かも知れない」
「何が、あったんですか?」
私と同じく白を基とした正装をしたアゼルが、眉をひそめる。その様子に気を引き締める。
「双子から報告があってね」
それは、ノーリッシュブルグの街で怒った殺人。しかも一家丸ごとであったり、殺害方法が残忍で、四肢を斬られていると。そんな殺害事件がいくつか起こり、同一人物ではないかということだった。
そして一人、被害者となった黒髪の女性にはご丁寧に表明がされてあった。
腕が捩切るように切断され、身体は壁に縫い付けられていた。