とある神官の話


 私の中にあったエドゥアール二世の、その、イメージが崩れた。どちらが素顔なのか。多分、こちらなのだろう。

 どうしたらいいの。戸惑う私をよそに「いきなり呼び出して悪かった」という。そんな、と腰を浮かせそうになる。だがそれを踏み止まり、すすめられた紅茶を飲む。あ、おいしい……じゃなくて。

 どうして教皇が私に?




「ノーリッシュブルグの件は聞いている。それからミノアも。……大変だっただろう」




 教皇にまで知られているのか。
 よくよく考えれば、ヤヒアにも私は会っている。ならば上の人に知られていてもおかしくないか。
 それにハイネンだもんな、と笑うエドゥアール二世。うっかり頷きそうになる「で」

 些か、真面目な顔となる。





「ヤヒアや、リリエフに何かされなかったか?」

「?」

「報告書以外で、何か」




 思い出せ。思い出せ。
 リリエフ? 彼女と会話らしい会話といったら、何も……。

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