とある神官の話


 意味が、わからない。




「彼女は今、ブランシェ枢機卿の配下といえますので。それか、フォンエルズ枢機卿でも大丈夫でしょうが」

「貴様ら……」





 ヒーセル枢機卿の顔か歪んだ。

 ちょっと待て。私はにこやかに答えるハイネンの顔を見た。どういうことなのか。許可を得ていないのなら、と一礼し去ろうとする私らに、「シュトルハウゼン!」と鋭い声。彼は振り返らない。




「何のつもりだ?その女は―――」

「それ以上言えば」





 それは、冷たい声。

 ヒーセル枢機卿の側にいた神官が顔色を変え、表情を引き攣らせる。体は動きをとめさせるだけの迫力があった。私も動けず、その場に立ち尽くす。
 ハイネンとヒーセル枢機卿の間に亀裂。圧力を生む。




「赦しませんが?」

「っ――――」




 先に動いたのは、ヒーセル枢機卿らだった。顔をしかめ、背後で歩いていく。こちらもまたハイネンが歩みを進める。




「――――すみませんねえ」

「ああ、いえ……」



 ようやく見慣れた場所へと出た。先程とは違い、いつものハイネンに戻ったらしく「彼は」と口を開く。


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