とある神官の話
「一部の枢機卿は、貴方のことを知っています」
「過去を、ということですか」
あまりいい思いはしない。私が特殊で普通じゃないから、知っているのは上だけだ。けれど―――――誰にも知られたくない、私の過去。
知っているとしたら、どう思っているのか。アゼルは知っていて私の友人となった。けれど……。
エドゥアール二世に言われたように、もし堕ちたら「好きですよ」
「は?」
「貴方の過去は確かに重いものです。ですが知ったら離れる、そんな関係ならばさよならして正解ですよ――――それに残念!貴方のまわりにいる方々はそんなことで貴方のことを嫌いになりません。何だったら私がそんな風に悪く言う奴の背中をどついて高笑いして差し上げますから」
安心して下さい。
そう笑ったハイネンに、ああ、ゼノンに似ているなと思った。それからどこと無くエドゥアール二世にも。ただ、ハイネンの年齢を考えれば逆なのかも知れないが。
ハイネンがまるで、子供にしてやるように、私の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。ちょ、ちょっとハイネンさん!と言うが、それは二十歳過ぎた女性にやることではないという、照れからの抗議だった。
本当に、この人たちは……。
* * *