とある神官の話
――――昔の話。
気がついたときには、私は私だった。ここはどこだろう。名前は覚えている。いや、この名前は私のものなのだろうか。ただ記憶にあるだけで、私のだと確信出来なかった。私は誰だろう。誰?
「ああ、可哀相。可哀相な子。どうして貴方なのかしらね。ねぇ、私が、貴方を解放してあげる。私は貴方のことを思っているのよ。可哀相に、震えて。怖くないわ。大丈夫」
女性はそう言った。顔はわからない。でも知っている。暮らしていたから。
でも名前は、この人から貰ったんじゃないと思う。本当の親が私を、"シエナ"と呼んでいたはず。だから、同じくそう呼ぶ女性は、本当の親ではない。
幼い頃から、変なことがまわりで起こった。それは単純に、動いたり、無くなったり、飛んだり。そんなことだった。皆が皆そうではないのだと気づいたのははやかったが、私を化け物だと思われるのも早かった。
首に手をかけられた。真上には優しげな笑みを浮かべた女性。そうだ。私は逃げた。そしてまた拾われたんだ。子供が欲しくてたまらなかったこの人に。
首が閉まる。呼吸が出来ない。ああ、苦しい。苦しい苦しい苦しい苦しい。でも、この人のいう通りかも知れない、楽になれる。楽に――――。