とある神官の話



 私は怖かった。
 その恐怖が私のまわりに渦巻き、具体化していく。男が「"異能持ち"か」と目を見開いたが、それだけだ。
 片膝を地面につけ、目線を低くする。何をするつもりなのだろう。



「怪我をしているのか」



 私は答えられない。痛いけれど、わからない。既に私は、傷だらけだったから。
 男の背後では、まるで人形のように転がる人が見えた。私もああなるのか。怖い怖い怖い怖い怖い!「セラヴォルグ」

 男は、いきなりそう口を開いた。深緑の、まるで自然を思わせるほどの髪と、まっすぐな目は、私を見ていた。
 どうしてそんな目をするのだろう。わからない。わからない。




「私はセラヴォルグという。君の名前は?」




 この出会いが、"私"の始まりだった。





  * * *


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