とある神官の話



「ハイネン?」

「あの糞野郎」

「お、おい」



 ああ失礼、と口を閉じる。ラッセルが首を傾げたので、仕方ない「ラッセル・ファムラン」



「貴方、覚悟がありますか」

「……、いきなりだな」

「人には、様々な過去があります。貴方にもあり、私にもあるように」



 昔。

 まだ、あの人が生きていた時。あの人は、奴を殺した。取り返しが付かなくなる前に。それは正しい判断だった。だが、彼にとっても、彼の娘にとっても傷を負わせた。
 そうだ。初めて娘がいると聞いたとき、私はひどく驚いた。貴方に娘?冗談でしょう。ちゃんと育てられるんですか。というか相手は?拾った!?


 ―――いつか会わせてやろう。だがお前にはやらんぞ?


 あの時は「セラに似たら最強になりかねませんね」と笑った。生きていたら、確かに最強ですよ、と言ってやったのに。ねえ……セラヴォルグ。




「貴方は、知る覚悟がありますか」




 私一人ではどうにも出来ない。一緒にいて欲しかった人は亡く。
 人は弱い。我等を容赦なく置いて死ぬ。忘れられるだろう。


 それでも、私は。
 守りたい、と思うのですよ。




  * * *




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