とある神官の話
――――幸せだった。
あの日、セラヴォルグ・フィンデル宛に手紙が来た。それはここからやや距離がある、聖都から。正式なものらしく、届けにきた者は綺麗な衣を来た者だったのを覚えている。
その手紙を開けて、父さんが「何を考えているんだ」と低い声でそう漏らし、眉を潜めた。しかし次には私に気づいたようで、「シエナ、シュエルリエナ」と呼んだ。
滅多に"シュエルリエナ"と呼ばない父に、私は違和感を覚えた。そう呼ぶときはたいてい、父が真面目な顔をして話すのを知っている。
「私は聖都に行かなくてはならない」
「留守番なら平気だよ」
「いや、まあ、そうだろうが……」
父は、あまり私をひとりぼっちにさせない人だ。神官だから遠くに出ることもあったが、大抵は近所の人に私を頼んだ。
おかげで近くに住む老夫婦は私を孫のように可愛がってくれていた。
父は、何を心配しているのだろう。