とある神官の話
まだ、"あれ"を話してはいない。だが、ラッセルは「今更だな」と、覚悟を見せた。何年も牢にいたのだから、今更何を恐れるのか、と。
だから私は、話し出す。彼女――――シエナ・フィンデルのことを。
「驚きましたか」
「そりゃそうだろ!セラヴォルグ・フィンデルって言ったら……」
"あの"アガレス並に当時、名を馳せていた人物の一人だ。
二十年程前に起こったあの事件よりも前にあった大きな事件をいくつか解決している。
私が神官になったときには既に、神官だった人だ。同族で―――変わり者。
何度も聖都に喚ばれ、聖都にいるように説得されてもなお、彼は最後まで首を縦にふらなかった。久しぶりに会ったときに、彼は変わったな、と思った。それはそう、きっと、シエナのお陰なのかも知れない。
丸くなった、というべきか。ただ、人離れしていたのが、人間らしくなったというか「まあ」
「セラヴォルグの娘、ということは上からの命である程度伏せられていましたからね……どっかの阿呆がほじくり返したせいで、彼女、有名人ですよ」
「あー」