とある神官の話



 無性に、怖い―――――。




「――――」




 人の気配がした。ゆっくり立ち上がり、顔を向けた。人。今時期に墓地で人に会うのは少ないのに。そういえば前にも、見知らぬ人と会ったっけ。
 その人は、短髪で、中性的な顔をしていた。腰に細身の剣を下げている「あな、た……」
 言葉が消えた。



「生きているというのは本当だったのだな。シエナ」



 "生きているというのは"?
 私にそう言うとしたら、誰だ――――いや、私は知っている。そうだ。私は知っている。昔、膝を抱えて、泣いていたあの子。

 まさか、そんな。




「本当に驚いた。死んだと思ってたのに」

「ルゼウス」

「いいよな。"本物"は」

「っ」




 父は何故死んだのか。
 父は、私のせいじゃないと言った。けれどあれは、私も関わっていたのだ。私でのせいで死んだようなものなのだ。

 私は、"本物"だったから。

 距離にして数メートル。
 最後にルゼウスに会ったのは、父が死ぬ前。まだ幼かった頃だから、ルゼウスがどのくらいなのか、私は知らない。ただ、ルゼウスが私を死んだと思っていたように私も、ルゼウスは死んだと思っていたのだ。


< 366 / 796 >

この作品をシェア

pagetop