とある神官の話




 無事だな、と言う局長に頷き、私はあらためてほっと息をはく。――――何故、だなんて言うだけ無駄かも知れない。
 追い掛けるのは無駄だと判断したらしい。ほら腕、と言われ、応急処置を施すロマノフ局長に「ヒューズさん、ですか」と聞いたら、頷く。




「さて、と。お前、少し厄介になってきたな」

「……でしょうね。ブランシェ枢機卿から文が来ましたよ。気をつけろと」

「あー。というか気をつけろつったって困るよな。お前のせいじゃねえし」

「そう、なんでしょうか」



 わかりません、と言った。私のせいじゃない。本当に?それはいつも去来する。私を蝕む。
 そしたらわしゃわしゃと頭を撫でられ「ばーか」と言われた。



「そんなの当たり前だろうが」



 さて、宮殿に戻らないとならんな。そう息をついた局長に「行くか」と言われ、私は頷く。このことを報告しなくてはならない。


 気が、重かった。






  * * *






 ―――――その当時。

 あのアガレス・リッヒィンデルが、多くの神官を殺害し、指名手配されて。教皇が変わった――――激動だったと言えよう。
 聖都では、ヤヒアやリリエフなどと名前を上がり、指名手配されていった頃である。
 その当時、ウェンドロウという闇に堕ちた"魔術師"の能力を持つ地方の男が、指名手配となった。人体を使用し、闇術に手を染めた者としてである。


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