とある神官の話


 私は確かに走ったはずなのに。




「やれやれ。お転婆だな」

「あっ……」




 力が抜けた。足が、腕が、全てが止まる。ああ、どうして。

 私があの場所で見たのは、炎と死体と、にやりと笑う男――――ウェンドロウのみだった。



 私の記憶には、やや怪しい部分がある。それは後日、精神的に蝕まれた結果ではないか、ということだった――――。






 ――――苦しい。

 我に返った私は、己は今どこにいるんだったか、と確認する。どれくらいたっただろう。日付がわからない。建物から出られないからだ。

  気づいたことは、私の他にも子供がいたこと。そして、 その子供は"変わっている"こと。つまり、"能力持ち"だったのである。だが、彼らと私とでまだ違うところがあった。


(一人、減った……)


 私が何故連れて来られたのか。私にはまだよく理解出来なかった。あの爬虫類のような男に連れて来られた場所で、一私は生きていた。殺されずに。
 男―――ウェンドロウは、私にいう。お前は選ばれたのだよ。そうさ。なんたって私が見つけたのだからね。いい目だ。お前は優れている。信じられない?疑うのか。良いだろう。疑え。疑うがいい。ウェンドロウは嗤う。


 目の前で"実験"を見た。




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