とある神官の話



 はっとした。
 実験を見てから、食欲がない。ただ、こんな所で死んでたまるか。そんな気力から、少しでも胃には入れていた。
 ぼうっとするまま顔をあげたら、私と同じくらいの年齢の子がこちらを見ている「なに」



「お前、"外"から来たんだろ」

「外……」

「建物の外から来たんだろ」



 連れてきた子供は、なにも私だけじゃない。そう。ここで育った子供もいるのだと、私は気づいた。
 あちこち撥ねた茶髪が揺れるのを、小さく頷きながら見つめる。

 その子は、私に外の話を聞きたがった。前にいた外から来た子供がいなくなったから、教えろと。お前はイカれてないから、話せるだろ、と。
 子供たちが、"実験"されていくうちに可笑しくなってしまうらしい。それが死因の一つでもあるのだ。近寄ればぶつぶつと独り言をいったり、さ迷い歩いたりする子供を私はすでに見ていた。なのに――――私に話し掛けてきた子供は、しゃんとしていた。まっすぐだった。


 だからなのだろう。
 その子が、ウェンドロウが欲しがる"本物"に近いと言われていたのだ。






 子供らが消えたり、増えたりするのが日常的となった。父さんは――――どうしただろう。私が居なくなったことを知っただろうか。死んだとでも思っただろうか。
 父が無事ならそれでもいい。でも、私は戻りたい。帰りたい。


 ウェンドロウがあの子を―――ルゼウスを連れていって、まだ戻らない。戻らない? 何故。
 戻らない子供?気になるかい。いいよ教えてあげよう。その子らは、死んだ。可哀相に。"本物"じゃなかった。能力があるからといって、選ばれるわけじゃない。お前はどうだろうねえ。

 黙れ!




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