とある神官の話
「会いたいか?」
「………」
にやりと笑うウェンドロウに、私は何もいわない。会わせてあげるよ、と言われ連れて来られたのは、部屋。
ああ私も死ぬかもしれない。
私が見た、あのガラス越しの部屋だ。地面に術の陣がないことくらいしか変わりは無い。見上げればガラス越しに、不気味に笑うウェンドロウが見えた。ほら、見てご覧。君が望んだルゼウスだよ。
同じく、連れて来られたのはルゼウスだった。寝癖のように撥ねた髪に、むすりとした顔。違うのは、赤い何かが衣服にも、そして顔にも付着していたこと。
「ルゼウス?」
私は声をかけた。ルゼウスは動かない。どこを見ているのだろう。目は虚ろだった。
私はもう一度、名前を呼ぶ。ルゼウス。女の子なのに男の子みたいな名前だ、と私は話した。名前なんてどうだっていい、とルゼウスは言っていた。
名前は、大切だから。私が、父から貰った名前を大切に思っているように。
「ルゼウス―――!」
……あ。
私が声をあげる前に、床に背中があたった。唇からは空気。倒された?どうして。
腰あたりに跨がり、ルゼウスは鋭く私を見下す。どうして。何故。何があったの?その血はなに。大丈夫だった、生きててよかった。でも、何故。
言いたいことは、あった。なのに言えないのは、真上にいるルゼウスを見たからだ。