とある神官の話



 二杯目のコーヒーを入れながら、私もラッセルも無言だった。知ってしまったら、後には戻れない「なあ」


「それで」


 ラッセルは口ごもる。
 ――――ウェンドロウか犠牲とした子供や能力持ちの人数は、百人以上とされる。正確な人数が不明なのだ。
 闇術に手を染めなかったら。そう想像してしまうほどの力を持っていたのは否定できない。



「彼女に刻まれたのは、何を意味するのかわかっていません」

「そう、なのか」

「しかも、封じるようにその上に新たに術を施した本人であるセラも、もういませんしね……」



 彼、セラヴォルグは死に際に娘に何らかの術を施したのだ。だが―――わからない。シエナを何人もの神官が調べたが、結局わからなかったという。彼女の身を守るものだというのはわかるのだが。
 ウェンドロウはセラヴォルグに殺害され、全て無くなったのだ。

 そう。ウェンドロウを何故殺害したのか。捕らなかったのか。知らない者たちはあれこれ言った。それに激怒したのは、フォルネウスやエドガーだったか「あの子は」


「一生背負ってくことになるのか」




 聖都で保護された子供の傷は、癒えるだろう。だが、彼女はそうじゃない。

 それは――――重い。
 いつまでも彼女を苦しめるだろう。


 セラヴォルグがいた村は全滅し、山の中にあった家もしかり。故郷がない彼女は、ある程度の歳になるまでひっそりと生活し、聖都へときたのだ。傷を抱えて。



「そういえば、ジャナヤへ向かった神官が戻らないって――――おいおい」



 ラッセルがはってしたように顔を上げた。私も溜息をつく。


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