とある神官の話




 別に何処の誰だろうと、私は気にならなかった。彼女の名前がシエナ・フィンデルて知った時だってそうだ。シエナ、フィンデル。シエナというのか。シエナ。何度も確かめた。
 自分でも末期だと思う。
 前は、同い年くらいの連中が色恋にうつつをぬかすのは馬鹿らしいと思っていた。神官なのだから勉強しろと。それに私は、"能力持ち"だったから。油断が死に繋がるから。それに――――早く役立ちたかった。馬鹿かお前。お前はお前だろうが。父は言う。けれど私にとっては貴方は、恩人でもあったのだ。

 何度いっても「お前の好きなように」というなら、私はそれに甘えることにした。いっそのこと、馬鹿みたいではなく、馬鹿になってしまえばいい。彼女が好きだ。好きなのだ。だから今度は、彼女を守れるように――――。




「お前も仕事熱心だよな。シエナ達は休みだろ?」

「私は勝手に行きましたからね」




 宮殿の一室。私とランジットは机に向かっていた。
 呆れなのか何なのか。ランジットの赤い目が細められ「稼いどけ稼いどけ」と意味不明なことを口に出す。何だ、と聞けばにやにやと笑み「もし、いいか?もしもの話だが」


「早く言え」

「お前がシエナとくっついて結婚でもして、子供とか出来たら金使うだろうが」

「……、………ああ」



 想像してしまったではないか。




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