とある神官の話



 ちょっと寄越しなさい、とやや乱暴な声に耳に届く声が変わる。ヨウカハイネンの声だ。背後では「暴言だ!」やら「何を考えている!」やら、騒がしい。




「どうしました―――」

「ゼノン・エルドレイス。貴方は覚悟がありますか」




 その声は、明らかに普段とは違う力が孕んでいた。いつもの変人ではなく、ヨウカハイネン・シュトルハウゼンという、神官としてか。下手をしたらその辺の枢機卿並に威力がある声だった。
 驚いて言葉につまった私に、ハイネンは続ける。



「貴方は、大切な人のために命を、そして知る覚悟はありますか」



 決まっている。




「あります」

「なら―――――ゼノン、今からこちらに来なさい」




 受話器を置いた。

 書類から顔を上げたランジットが、どうした、と口を開く。身嗜みを軽く整えながら、私は聞いた。お前は、私の味方か?と。目を見開いたランジットが、「馬鹿じゃねえの」と笑う。




「当たり前だべよ。ばーか」





 会議室へ入室を許可して貰ったのはいいが、と私はやや混乱していた。無理もないだろう。
 ランジットに仕事を任せてきたのはいいが、あまり状況が飲み込めない。何故なら――――。


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