とある神官の話



 ヒーセル枢機卿がそう吐き捨てる。

 ――――セラヴォルグ・フィンデルが指名手配されていたウェンドロウを裁いたのは知っている。それで彼は、死んだのだから。だが……、思えば謎も多かった。
 娘であるシエナを助けようとした―――ウェンドロウに誘拐でもされた、とか。あいつは"魔術師"を名乗っていた。闇術に手を染めていた男は人体実験をしていた―――なら、その被害者であってもおかしくはない。

 それに、だ。

 父が教皇となったのは、アガレスが起こした事件後。父は知っていたのだ。だから、彼女を気にしていた。よりによって"魔術師"の能力持ちだったから。
 キースの話からだと、生き残ったシエナをどうするかで当時も話し合われたのだろう。閉じ込めるか、あるいは―――そんな話し合いに、父はどんな決断をしたのかわからない。だが、彼女は神官となり、今に至っている。



 彼女は、背負っていたのだ。




 いつ、どうなるかわからない。もしかして危険だと閉じ込められるかも知れない。あるいは――――下手したら殺されるかもしれない。
 だが、キースのいう通り危険だからといって閉じ込めるのは如何なものか。いや、冷静になればいい。ヒーセル枢機卿や、他の枢機卿がいうことも理解できない訳もないのが、もどかしい。
 一人の危険因子で、大勢を危険に巻き込むことになるなら、と。犠牲は少ない方がいい、そんな考えはわからなくもない。だが彼女の友人らは、納得出来ない。



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