とある神官の話
「"あの時"もそうだったでした―――犠牲は少ない方がいいと結論付け、己らは何も手を下さずにいた」
「シュトルハウゼン神官、何を……」
吐き捨てるようにそう言った彼を、ロマノフ局長やキースが見遣る。あの時?
「関わる者のほとんどは彼が殺害したのですがね」
「シュトルハウゼンっ!」
不謹慎だ、という言葉が飛び交うが本人はけろっとしていた。ああ――――アガレスの事件を言ってているのだろう。
睨みつけるヒーセル枢機卿をよそに、いつもの冷静さを取り戻したキースが「ジャナヤの件ですが」と切り出したことに話が元に戻った。
「先遣した神官が戻らず、そしてウェンドロウの事件の生き残りがシエナ・フィンデルに襲撃したということで――――新たに部隊を送っては?」
「しかし、誰が行く?」
「シエナ・フィンデルが関わりがあり危険因子ならば、部隊の一人にすればいいでしょう。"万が一"があっても切り捨てればいい」
「!」
おい、と口に出したロマノフ局長をとめたのはハイネンだ。今の発言は―――。いや、キースのことだから考えがあるのだろう。ぐっと抑える。
ハイネンと目が合った。
……なるほどな。
キースとハイネン。おそらく背後にはミスラもいるのだろう。当たり前といったら当たり前だ。考え無く動くはずがない。