とある神官の話



 ―――彼女の名を知られるだろう。


 決定が出ないまま、会議室を出てきた私はぼんやりと窓の外を見た。
 まだ冬は続く。四季が存在していて、些か冬が長いここ聖都ならばまだ雪は降るだろう。
 気が重い。



「エ、エルドレイス神官」



 不意にかけられた声に、私は振り返る。そこにはほっそりとした女性が立っていた。何か、と聞けば女性は唇を何度か震わせ、迷っているようだった。
 ……またか。
 前から、こういったのは何度もあった。私宛てにプレゼントを贈ってくる。声をかけてくる。喧しい、煩わしいとしか思えないそれは、今でも変わらない。
 血の繋がりがないとはいえ、私の父はエドゥアール二世なのだ。父が、大きすぎるのはシエナと同じかもしれない。




「私は―――――貴方のことが好きでした」

「申し訳ありませんが」

「ええ、いいんです。その、エルドレイス神官は、フィンデル神官を大切に思っているのでしょう?」

「―――」




 二人で前に歩いているのを見ましたから。そう笑う女性に、私も思わず苦笑してしまう。それもそうだ。仲良く歩いていたが、シエナは私に「ストーカー予備軍ですね貴方は!」と言っていたのを聞いたらしい。



< 389 / 796 >

この作品をシェア

pagetop