とある神官の話
ゼノン・エルドレイスといったら、あの若さで高位神官でエリート。だが、私はそんな凄い人物ではない。
女性は微笑む。
「敵わないな、と思ったんです。フィンデル神官と一緒にいたエルドレイス神官が、自然体だったから」
「自然体、ですか」
「私がいうのもあれなんですが」
頑張って下さいね。
そう言う彼女に、私も頷く。そして、ありがとうと。
恋をすると変わると誰かが言っていたが、確かにそうだ。覚悟はあるかと言われたとき、即答したのは本心だった。彼女が傷つくのも、悲しむのも―――見たくない。泣くなら、悲しむなら私だって痛い。
行く場所は決まっている。
正式な手続きは不要だった。
勿論、それは正式なものではないからだ。私個人のことだから。知り合いであるエドガー・ジャンネスにやや手を回してもらい、こうして会いに来たのだった。
ゆったりと椅子に座り、ややめんどくさそうに印を押したり、書いたりしている主は「少し待て」と言っただけの仕事をしたらしい。
顔をあげた拍子に、耳にかけていた亜麻色の髪がするりと落ちた「いきなり来たかと思えば」
「お前なあ、突拍子なさ過ぎるだろ」
「おかげさまで、そんな人に育てられましたからね」
そりゃそーだ。
そう見た目に似合わない笑みと口調なのは、現教皇エドゥアール二世である。本名フォルネウスはほれ、と自らがいれたコーヒーを差し出す。大したこだわりもないので、エドガー・ジャンネスに比べたら味は劣るが、嫌いではない。