とある神官の話
「エドガーやハイネンがお前を何と言ってるか知ってるか」
楽しそうにするエドゥアール二世、もとい父さんは口を開く。
どうせろくでもない話をしてるんでしょうに。
「何と!若い頃の俺にそっくりだとさ」
「……」
何か嫌だ。
聞けば父は昔から破天荒だったらしい。枢機卿となってからも聖都に留まらず、あちこちに出歩いていたとかなんとか。よくもまあそれで教皇になれたな、という本音が浮かびあがる。
自分が知る父は、慣れないくせに何でもやりたがった。ゼノン、勉強もいいけどたまにはキャッチボールだ!などと言いはじめたり、散歩に行くぞと言ってみたり。
――――悪くは、なかった。
「シエナ・フィンデルについて聞きました」
「ほう」
「貴方は、何故――――」
「危険因子である彼女をそのままにしたか?」
教皇という立場なら、やはり一人よりも大勢を取るだろう。だが父はしなかったのだ。アガレスの一件で神官や枢機卿の一部を一掃するだけの冷徹さを持っているというのに。
シエナには悪いが、最善策でもあったはずなのだ。それをしなかったのは―――。
菓子に手を伸ばし、口にほうり込む父は笑う「そりゃあ」
「大勢の犠牲より、一人の犠牲のほうがいいのかも知れない。だがそれで良いのか?といったらそうじゃない。その一人を知ってる奴から見たら、尚更だ」
「ええ」
「彼女の背中に刻まれた模様は俺も見た。その上から更に見たことがない古い術がかけられた―――――セラヴォルグがかけた、彼女を守るための術だ」