とある神官の話
慌ただしい聖都の宮殿内を、何だか久しぶりに歩いたような気がする。窓から見える外は、また雪が降りはじめていた。
もうすぐ歳が明けようとしているから、その後の祭事の準備をしているのだ。
―――死ぬかもしれない、か。
孤児院のブエナに、"事情"を話した。私は少し聖都を離れなくてはならないことや、事件のこと。彼女は何かを感じ取ったように、私を抱きしめた。シエナ。私は待ってるからね。待ってるよ。カイム達だってそうだよ。待ってるから。
「フィンデル神官」
「―――」
己の知らない顔だった。
男は何気ない顔で私の隣に並び、窓を見遣る「何のようですか」
「ヒーセル枢機卿から伝言です」
「何でしょう」
身構える私に男が口を開いた。それにぐっと握りしめる拳。わかっている。わかっている!
では、と去っていった男の背中に「くたばれ」と漏らす。アゼルの口の悪さでも移っただろうか?いやまさか。私だって口は悪い。ただ隠しているだけだ。
―――くれぐれも己の過去を忘れぬように。
"知られている"ことの不快さ。
いつも付き纏う、お前は危険因子に変わりはないということ。危険因子だというのは最初からだ。能力持ちなのだから。
背中に刻まれた"それ"は、私を縛る。死ねばよかったのに。私は出来なかったのだ。巻き込んでやればよかったのに。私は、出来なかった。そうさせてくれなかったのが、父だったから。
お前を死なせるわけがない。私はお前の父だ。馬鹿だな。私がお前を見捨てるわけがない。待たせて悪かったな――――父さん。
やはり貴方は死ぬべきじゃなかったのだ。貴方は、生きるべきだった。