とある神官の話


 ええ。
 頷いたハイネンに、私は思い出す。父が死んだ日―――ルゼウスもまた、私は死んだと思っていた。しかし、ルゼウスは生きていた。成長し、私への憎悪をそのままにして。
 肩に重み。大丈夫だ、とでもいうようにアゼルが手を伸ばし、軽く叩いたのだ。私は大丈夫だと頷く。
 確かにハイネンの言う通りかも知れない。だとしたら、私を狙うのも何となく理解できた。私は、ウェンドロウの"お気に入り"で、"本物"だったから。



 ルゼウスは救出されてもなお、縛られているまま、あの場所にいるなら……私は殺せるのだろうか。




「いつの時もよからぬ事に手を出す者はいるものです……。ジャナヤに人が住んでいたのは半世紀くらい前ですが―――」




 人体実験。関わったのは枢機卿。そして終わらせたのは私の父、セラヴォルグ・フィンデル、それからヨウカハイネンらであった。
 ジャナヤが表に大きく出なかったのは、枢機卿が関わっていたからなのだろう。まだ教皇がエドゥアール二世ではない時代。それからしばらくして、アガレス・リッヒィンデルが事件を起こす。


 ジャナヤは闇術の跡を深く残したため、全体的に閉鎖され、今に至る。
 惨いものです、とだけ漏らしたハイネンは伏せていた視線をあげた。




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