とある神官の話
「どうしてそんなに強いんです?」
「……私にもわからないが」
「アガレスといい貴方といい、私は敵う気かしない」
鍛練に付き合って貰ったのはいいが、あちこち痛んで動けない。そのすぐ近くには優雅に佇む男、セラヴォルグがいた。鍛練に付き合ってもらったのはいいが、歯が立たない。
アガレスは昔、セラヴォルグに助けられたことがあると聞いた。アガレス自身はあまり己のことを話すような人物ではないか、たまたまあの時は話したのだ。あいつは強い、と。
隙あり、と蹴りあげようとしたが足を掴まれ、吹っ飛ばされる。着地「だが」
「見込みはある、と思う」
「そこは断言してはくれないのですね」
彼は、アガレスよりも人間臭さがあった。同族であるのに、彼は人間らしい気がした。だから時折、同族からの嫌悪されるらしい。
彼も多くを語らなかった。だが――――そう。
人間らしいのは、人間に育てられたからだと彼は言う。人間と、我等ヴァンパイアは違う。どうやっても、人間は我等を置いていく。置いて、死んでいく。それは大切だと思えば思うほど、置いていかれる者は苦しい。見送るだけの己と、去るもの。
いつの時代も光があれば闇があり、それは何処にだって存在していた。だからこそ、あの人は変えようとした。腐っていた内部を少しずつでも変えようと。
しかしそれは簡単なことではない。一体誰が味方で敵なのか。
ただ、そう。神官は枢機卿らの命ならば遂行しなくてはならない。それが、疑問符を残すことになっても。当時の私は何も疑問符などなかった。ただ、彼らは違っていたようであったのは、何となくわかっていた。