とある神官の話



「上の連中は何を考えている……」




 指名手配された者へ裁きを。聖都にいることの多いアガレスは、ぽつりと呟く。焼けた死体の匂いに不愉快そうに他の神官が背をむける中、彼だけはまっすぐ見ていた。
 言われるまま任務を熟し、人々を魔物や闇に落ちた殺人鬼から救う。そう言葉や文字にするのは簡単だった。任務管理と書いて、アガレス・リッヒィンデルと、ヨウカハイネン・シュトルハウゼンと名前を書くのも、簡単だったのだ。

 ジャナヤと呼ばれる地域には人々が住んでいた。辺鄙な土地ではあったが、それが結果上手く"隠す"こととなっていた。しかも、当時の聖都に属する枢機卿が己の欲望のために魂を売り払い、そこでひっそりと始められていたのは―――――現実に、地獄を産む行為。



 何故です、と彼は糾弾した。何故。何故枢機卿という身分である者が、そのようなことをする?
 罪のない民間人を拉致し、それで実験を重ねる。あるものは新たな術を試すため、あるものは魔物と人間の融合、またあるものは、"能力持ち"について、まるで命を何とも思っていない、ごみのように扱っていた。生きたまま腹部、頭部を切り裂かれる激痛、絶望。あの世にど地獄はないのだ。そう、この世こそまさに地獄だろうといわんばかりの、異常者たち。



 彼は少しずつ、壊れていったのかも知れない。



「セラ。お前はどう思う?本当にそんな組織があると思うか?」



 闇に堕ちた者たちの組織があると言われてはいた。だが、確たるものが出てこないし、名前すらわからない。不安感が走る今、「有りそうなものに不安感を押し付けているように思う」と答えたセラヴォルグに、私はぎょっとした「待って下さい」


< 405 / 796 >

この作品をシェア

pagetop