とある神官の話
ジャナヤは燃え上がっていた。しかし炎はそれ以上広がることはない。それは神官があちこちにジャナヤに張り巡らせた術によるもの――――ジャナヤにいるヒトはみな"裁く"ため。
既に枢機卿は死に、残党が喉を掻きむしり絶命。毒により痙攣していく者たちを、容赦なく刃が切り刻んだ。
「これで、本当に終わるのか……?」
男は、アガレスは燃え上がる炎を見つめた。子供の死体が、何かに縋るように腕を伸ばしたまま、黒く焦げていた。地獄だ。地獄。そう、ヒトは地獄を生む。
ジャナヤの件は表には出ず、知るものは少ない。しかも関係者は廃人となったり自殺したり、今現在まともに生きて神官をやっているものは、私くらい。
おそらく、だが。
アガレスはあの前から、"彼女"の死を不審に思っていたのだろう。そして一部の腐った枢機卿らの目をかい潜るように調べたのた。何故、"彼女"が死んだのか。あれはもしかしたら、裏切りになるのではないかと。
ジャナヤの件から数年後、アガレス・リッヒィンデルが多くの枢機卿と神官を殺害し、聖都を去ることとなる。
* * *
不愉快な目覚めに、溜息。髪の毛をかきあげたまま、制止。男は目を伏せる。
昔の夢を見た。
それは激動の時代だった。拾った男は神官となり、今もなおそこに留まり戦っている。もう一人は、驚くべきことに子供を拾い、そして己の子もして父となり、死んだ。
――――何故、何故。
――――しっかりしろアガレス!