とある神官の話



「神様に助けてと叫んで助けられたら、今現在戦争も紛争も不幸もない状態なはず。神様が人を助けて、悪魔が苦しめるだなんて、人が勝手に考えているだけではないかと」

「ほう」

「ですが、それでも祈るのでしょうね」



 男は「前に」と口を開く。




「同じようなことを言ったこと者がいた。神も悪魔も、どちらも、どちらにもなりえるのだと」




 視線は前にある祭壇へと向けられている。この人は聖都に住んでいるのだろうか。こんな日に、こんな人が一人いるというのは、少々違和感もあった。
 新年を祝う、そんな雰囲気を感じられない。むしろ、疲れているような気がする「今日は」

 お節介、かも知れない。




「こんな所にいていいんですか?今日は、元旦ですよ」

「人の多いのは苦手なのだ」




 男が思い出したように、苦笑する。確かに今ならば宮殿あたりは人で混雑しているだろう。私は頷く。
 



「では、私も祈ろう」

「何を祈るのですか?」

「私の願いが叶うように。それから」



 男は椅子から立ち上がり、祭壇の前へ立つ。私はその隣で、祭壇を見て、男へと視線をむける。男はずっとこちらを見ていたらしく、ふっと表情を和らげた。美形にやられると私は困ってしまうが、目を逸らせない。


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