とある神官の話
「君が、幸せになれるように」
そんな馬鹿な、と思った。
熱を帯びた私をよそに、男は跪く。それは騎士が忠誠を誓う時のような、絵になる姿だった。男はそのまま目を閉じる。
男が祈るなら、何だか叶うような気がした。何故だろう。
男は目を開ける。膝を伸ばし、立ち上がった。これで大丈夫だろう。そう男は笑う。私は忘れないうちに名前を聞かなくては、と思った。だが、先手を打たれるように男が「手を」という。私は言われるがまま、彼の差し出した手に己の手を重ねた。
「君と話せて、よかった」
軽く手を持ち上げると、彼は私を残して去っていく。
名前の知らぬ、その男性は何者なのか。名残惜しげに私は見送った。振り返らないかと思ったが、男は振り返らず、扉に消えた。
不思議な、人―――――。
* * *
普段のゆったりとした神官服とは別に、例えるなら軍服のようなバージョンもある。それは魔物などとも戦う神官ならではのことである。
もっとも、魔物などと戦うことが多い者は動きやすい各々の格好をしていることもあるのだが。
ズボンに戦闘用長靴を纏う姿をしているのは、やたら似合う中年の男。そして同じような格好で腕を組み、金髪を結い上げた女傑。
口を開かねば文句なしの美丈夫二人と、美丈夫の片方の相棒を勤める苦労してそうな男一人。