とある神官の話



 人体実験―――――だけではなく、人に知られてはまずいものをする場合、やはり見つかったときのこと、失敗したときのことを考える。そう。




「地下通路か。成る程……」

「あの建物を含んで、昔は町だったりしましたが、辺鄙な場所ですし、段々衰退した――――さて、その地下に入ろうと思いますが、気をつけていきましょう」




 建物に近づくようにして下りていくと、建物の残骸があちこちに見られる場所に出る。まるで遺跡のようだ。崩れた石や、半壊の建物。本当に人が住んでいたのだと思うのと同時に、残虐な過去を思い出す。

 背筋が、ざわつく。
 どれだけの人が、死んだのか。

 ハイネンはどう見ても石、しかも無造作に転がっているとしか思えない場所へしゃがみ込む。


 白い手が、石を撫でる。「あっ……」と思わず声を出して後悔。




「おや、貴方には聞こえましたか?」

「聞こえた?」

「ちょっと細工がしてあるんですよ―――ええっと、シエナにはランジットとゼノン、私にはランジットとアゼルでいきましょう」

「行くって……」




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