とある神官の話




 私に聞こえたのは、『汝、我の知る者か?』というもの。気のせいではなかったらしく、ハイネンに言われるがまま、私は石の前に立つ。右にランジット、左にゼノンが立つ。
 しかも「手?あれですか?どんな繋ぎかたでも?」と手を繋ぐように言われて、何故かゼノンがにやつく。どうにでもなれ!と私かゼノンとランジットの手をとるか否か、背中に衝撃。ハイネンが押したのである。
 衝撃によって私はよろめいた。そして一歩、足が出た。その足が、ずぶりと石に沈み込んだことに焦る。が、悲鳴もまた石へと沈み込んでいく――――――。


 すぐに地面に足がつき、三人そろってぽかんとそれを見る。地下。淡い光があるため真っ暗ではないが、無気味な静かさだった「やっぱり」
 すぐ背後で声がしたため「ぎゃっ」と振り返ると、同じく到着したハイネンが笑う。




「セラの娘ですから、聞こえたのでしょうね。ここの術式は、アガレスや私、セラヴォルグが施したものもあるので」




 つまり。
 閉鎖したのはいいが、またいつ誰かが入るかわからない。ゆえにあちこちに術をかけたのだが、"神官"は受け入れられるような術をかけたのだという。
 だが、ジャナヤでは枢機卿が関わったことから、ハイネンらはもう少しひねった術をかけた――――それが、彼らに認められた者も入れるというもの。

 いつ私は認められたのだろう?


 私の疑問はともあれ、ひっそりとした地下通路を、ハイネンを先頭に進んでいく。





< 416 / 796 >

この作品をシェア

pagetop