とある神官の話







 抱えているのは数冊の本。それは見習い神官の小講義にて使用したものである。バンドでとめたその本を脇にかかえ、早足で歩いていく。
 つい先程、小講義を行うために宮殿を出ていた。まだ"神官"ではない見習い神官は、熱心に質問をしてくる。時間をオーバーしたが、すでに今日の仕事は終えていたので構わなかった。
 質問を切り上げようとした時、入ってきたのは中央から来た神官で、信じたくない事実を述べた。





「カイムという少年を知っていますか?」

「ブエナさんの孤児院の?」

「はい。それが―――」






 シエナさんがいなくなった?

 カイムは覚えている。ブエナさんの所にいる少年だ。話によれば、カイムはシエナとともに買い物に出たという。

 そして、帰ろうとした時、カイムが店のディスプレイに目を奪われた。再び振り返った時には、シエナの姿がない。


 一人カイムを置いていくというのは考えられない。一体何があったのか。





>>
< 42 / 796 >

この作品をシェア

pagetop