とある神官の話



 もっと高みへ!それは力を持つもの、あるいは求めるものが望むこと。探究心や好奇心。失敗と成功。



 力は欲せられる。
 ―――――愚かな。




「そういえば、いいことを教えてあげよう。"彼"は目的を果たそうとしている。あまり時間がない。命が惜しいなら、離れることをお勧めするよ?」

「何をばかなことを」

「じゃ、頑張って」




 待て、という声は地震によって阻まれた。アゼルの「くたばれ!赤髪!」という声より、私は思考を巡らせる。目的を?シエナか捕まったと考えれば納得できる。だが、「ハイネン、ここはまずい」とラッセルのいう通り、天井が崩れかけている。
 "ここ"はあまり手を加えていなかったらしい。

 舌打ち。転がる人形を避けながら、「行きますよ!」と走る。何処にいけばいい?ご丁寧に昔とは違う内部の作りに、焦る。今ここにゼノンはいないが、彼がシエナと一緒にいることを願うが……。


 セラの娘を、信じなくては。


 光は闇に染まってしまうかもしれない。だが、逆もありえるのだ。裏も表も、必ず存在する。だから―――――。



 不安定な状態のまま、私たちは走る。




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