とある神官の話



 ただの人間なら、寿命はたかが知れている。実験を行う上での問題も、やはりそこにある。己の肉体の限界。
 ならばとウェンドロウは、シエナの可能性を見出だした上で己に手をかけた。部下でもあったのあろう、人間よりも長命であるユキトであったハインツ・サンダリオに目をつけ、己の身に何かあったらの予備とした。

「まあ、あくまでも仮説といったほうが良いでしょう。ああなっては確かめるのは難しいですし――――さあて」




 真横。それは本棚や壁をぶちまけてきたのは、人形。しかしそれは失敗作にしてはやたら綺麗に見え、かつ素早く強いだろう。「おいまじでか!」と部屋を出るラッセルと、廊下でランジットが「何なんだこいつらは!」と、廊下で応戦している。

 やれやれ。

 ヤヒアが言っていた"時間がない"のは、多分ハインツのことなのは確かだ。ならばそれまでにどうにかするしかない。アゼルを聖都に戻し、キースに派遣を望んだが、どうだろう。
 終わらせるには、やはりシエナを見つける必要があるか。私で殺せるならいいのだが。

 相手をするには、面倒だな。




「しんがりはランジット、私は先頭を行きます!」

「おうよ」




 そう返事をした仲間に、私は小さく笑みをこぼすがやがて、引き締め走り出す。





  * * *




 ―――ちゃ……
 ――おき――て………


 誰。誰なの。
 揺れるような感覚に、私は目をあける。それほど不快感はなく、けだるさを纏わせたまま目を開けば、いくつかの顔が見えた。それは見知った顔でもなく、ゼノンでもない。子供だ。




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