とある神官の話



 何故、私をここに?
 処分の命をうけた子供は、いなくなる。私がウェンドロウに囚われていた時からそうだ。あの男は何者なのか?いや、そんなものはどうでもいい。ルゼウスは私を憎んでいた。何故。あんなに……。



「君たちはここにいて!」



 部屋には扉がある。そこは確かに扉だが、開けられないよという声を私は無視するように、意を決して"すり抜けた"。
 明るい部屋から一辺、そこはジャナヤへ来るさいに通った地下通路とよく似ていた。もしかしたらジャナヤの、あの建物付近のなのか。

 方向には、自信がない。だが、そうも言ってられないことも知っている。

 私は体に仕込んでいたナイフを手に、出来るだけ明るい方へと進む。これといって分岐点もなく、その地下通路の行き止まり、梯を見つける。真っすぐ上に伸びているのを見れば出られるか。
 ハイネンらを見つけられたらいい。ゼノンは無事か?彼等が合流していてくれればいいのだが……。
 金属音を響かせながら、私は天井にたどり着く。そこには取っ手があり、押せるようになっている。



 少しずらし、見えた天井を確認。様子を伺いながら開け放つ。そこは建物内で、あちこちに打ち捨てられた椅子や机があった。あの場所からここに繋がっているのか、と私は忘れないよう、その部屋の扉を開けた―――――。



「おや、君から来るとはね」

「!?」



 運がないというのはこういうのをいうのか。
 開けた場所はひやりとし、血臭がした。転がる不気味な人形と、それに混ざった本物。
 奥にそれはいた。
 昔―――そう、それはあの男を彷彿とさせる姿で、私は指先から冷えていくような気がした。違う。あれは"あいつ"じゃない。あいつは、父が倒したはずだ。



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