とある神官の話
動け、と固まる体を必死になる。見れば私の顔をした人形が胴体を切断され転がり、そんなことをしたであろう本人が槍で壁に縫い付けられているのだ。本人――――ルゼウスはぴくりとも動かない。
「気にすることはない。所詮あれは本物になれなかった残骸だ。君とは違う」
「っ――――」
まさか。
戦慄。顔は違うのに、何故。何故、ウェンドロウと重なったのか。いや、私にはウェンドロウに見えたのた。一瞬、確実に。
「貴方っ!」
近寄ってくる。闇。
男は奇妙なことに、生きている感がない。血の通う肉体なはずなのに、まるで人形だ。からん、と私の足に蹴られた人形の腕のように、色がない。
手が伸びる。指先まで白いそれが伸びきる前に一線!距離をとる男。刃を一線させた者は私の腰を抱いて後退。銀色が視界にちらついた。
遅くなりました、と言うものの視線はこちらへ向けられない。中央にゼノンが切り落とした片腕が転がるが、すぐに灰となって散っていく。
「邪魔しおって」
腕を振るう男に、ゼノンは再び私の腰を抱いたまま回避。だが回避しきれず私を解放し、地面に転がるが地面を蹴る。
距離を狭めたゼノンが、振りかざす。纏わり付かせた氷が帯をひいて飛散。男は避けずに受け止め、弾く。
ゼノンの剣の腕はかなりらしい。それは私は知っていた。が、魔術との組み合わせたそれはさすがだとしかいいようがない。