とある神官の話
何だか、な……。
無事で良かった。アゼルにも言われたが、私自身どうもこう、すっきりしない。ルゼウスは死んでしまったし、保護された子供たちのこともあった。
もっと早くに気づいていたら。後悔ばかりが残る。
なにより―――死んだと思っていたウェンドロウか生きていたことにも驚いたし、ルゼウスもまた、一人戦っていたこと。そして"あの人"がまさか、指名手配犯だとも思ってもみなかった。
アガレス・リッヒィンデル。
「で」
「?」
先程までとはうって変わり、「難しい話は置いといて」と笑う教皇に私は顔をあげる。にたり、というか、にかりというか、そんな笑みを浮かべた教皇は「あいつさ」と口を開く。
「俺がいうのも何だが、あいつ本当昔は、顔はいいくせにちょっと生意気な餓鬼っていう感じでさ。俺もまあ困ったものだ。だが、中々俺に似ていい奴だっただろう?顔はいいからモテるらしいんだがなあ。性格はやや捻れてる――――ん?」
「あの、一体誰の―――――」
そう。この現教皇エドゥアール二世は、些か変わった人であるのは、前に会ったときに理解したつもりだ。だが、教皇が誰のことをいっているのかわからない。
ハイネンだろうか?
彼は教皇をハナタレエドゥアールと言ってしまえるつわものであるが、ハイネンのことではないだろう。小さい頃から知っているような口ぶりだと……ランジットか?それともアゼル?いやでも……。