とある神官の話
「と、父さん?」
「あれ、知らなかったのか?」
「ああもう少し黙って下さい」
とりあえず座りましょう、と言われるがまま座れば、向かいにいる教皇がにやつく。ゼノンが隣に腰をおろし、知っていますよね、と続ける。
ゼノンがとある人物に拾われて育てられたというのは、本人から聞いていた。勝手に喋られたのを私が"たまたま"覚えているというだけで、別に何ということもない。ちょっと意外で驚いたけれど。
固まる私に、ゼノンが放った言葉に更に固まることとなる。
「現教皇が―――エドゥアール二世が私の養父なんです」
さらに固まる私と「ぶふふ、やっぱり驚くよなあ」と呑気な声と、顔を覆うゼノン。いやまてまて、え?え?
つまり私は、教皇の息子である男を変態ストーカー予備軍などと呼んでいたことになる。うわ……。養父とはいえ、一国の主のような教皇と、養い子。待て待て待て。"あの"ゼノン・エルドレイスが?ただでさえ彼は有名人である。それにプラス教皇の養い子だなど。色々と無敵ではないか。
固まった私がどう教皇の前から退出し、さらに宮殿内を歩いているのか思い出せない。はっとしたときには宮殿から外に出る出入口近くになったときだった。当たり前のように腕をひいていたゼノンが「シエナさん?」と首を傾げる。
首を傾げても、さまになるな。だなんて思った私は慌てて手を離す。