とある神官の話






 ふっと不快そうにレオドーラがいうそれに、ゼノンもまた眉をひそめる。



「聖都には味方も敵もいる。ヒーセル枢機卿らが何を考えているかわからねぇ以上、信頼出来る奴らと一緒にいた方がいいだろう?――――あのハゲ親父どもや、外野がわらわらとシエナに興味本位で近寄ってきている」

「……確かに」




 興味本位、か。
 確かに、気になるだろう。セラヴォルグの娘を。

 そして他にも気になる。

 ヒーセル枢機卿は何を考えているのか、私にはわからない。ハイネンならばわかっているのだろうが……。





「それで、幽鬼の件もありますしならばと」

「では目的は、その幽鬼倒すと……」

「そうなりますかね。まあ、召喚主がわかればよし、という感じでしょうか」





 ああもう。
 どうして次から次へと問題が起こるのだろう。私はもう、"普通"ではいられないのだろうか。

 バルニエルには、アーレンス・ロッシュがいるから、会えるのは嬉しいが……。

 私の気分は重かった。




  * * *




 ―――――。


 年が明けたとはいえ、まだまだ春は遠いらしい。窓から見える外は、雪景色である。
 黒い外套に身を包んだ男が窓の近くに佇んでいた「それで」




「私は私で動いているが、私とて限界はある。わかっているだろう」

「……」




 この部屋にいる人影は、皆黒い外套とフードによってはっきりと顔が見えない。だが、皆がそれぞれ正体を知っている。だからだろう。やや苛立ちを隠せない男が、邪魔なフードを取り去った。

 そこに現れたのは、年配の男の顔。

 窓の近くに立つ男は、確かにこの格好は邪魔だなと思う。だが、この"隻腕の剣士"ならばこの部屋にいる年配の男や、その護衛などすぐに殺害できる。
 護衛とはいうが、この年配の男の部下であることも、剣士は知っている。







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